買い物中に妻がレジに並んでる間、息子と二人で待っていると、知らないおばちゃんが声をかけてきた。
息子と一緒だと声をかけられることはよくあることで、息子を可愛いと言ってもらえるのは悪い気はしないし、コミニュケーション能力が皆無の私にとっては修行の時間にもなるので、知らない人から声をかけられるのは好き。
とはいっても、声をかけてくる人によっては……
今回話しかけてくれたおばちゃんが警戒レベルがかなり高めな風貌で、私の緊張感が一気に高まった。
”人は見た目で判断してはいけません”
息子に教えるはずの私がそれではダメなんだろうけど……そうは言ってもね。
いつでも脱出できるように心の準備はしておこう。
ところが、おばちゃんは危険人物ではなかったらしい。
疑ってしまって、申し訳ありません。
今のご時世のことも考慮してくれて、距離をとりながら笑顔で穏やかに話してくれた。
おばちゃんは息子を見ながら
「お父さんに似てるところもあるよ」
と言った。
私も
「そうですね。お母さん似なんですよ」
と返した。
(今まで会った人の9割は妻に似ていると言う)
するとおばちゃんが
「うん。でもね、お父さんに似てるところもあるよ」
と返してくる。
ん?
この”お父さんに似てるところも”って言い方が気になる。
妻の顔は知らないはずだから、息子がお母さん似だと言うことは知らないはず……
だとしたら息子の顔の父に似てるところを、この短時間で見付けたということか……
マスクをして帽子をかぶっているから、私の顔なんてほとんどわからないはずなのに。
そうこうしてるうちに、おばちゃんは
「赤ちゃんが笑う顔見たかったけど、あまり長く粘って泣かせちゃうと悪いから」
そう言って立ち去っていった。
風貌から想像できない優しい雰囲気で、でもちょっと不思議な人だった。
おばちゃんに言われたことが気になったので、改めて私と息子の似てるところを確認してみると、マスクと帽子でも露出してるところを一箇所だけ見付けた。
もしかして、私と息子の瓜二つな眉毛の形に気が付いていたのか。