1週間分の子育て#146を公開しました こちらから

父の子育て絵日記 生後0ヶ月 2日目 出生届は真面目に出そう

息子

この日もずっと保育器の中。

出産直後から保育器に入っている。
肺の中の羊水を出すスピードが少しだけゆっくりだったことが原因らしい。

保育器に入るのはこの日までの予定だった。ところがもう1日延長するかもしれないと言われ、すごく不安になった。

医師の説明では、赤ちゃんがするべきこと(ミルクを飲む、おしっこ、うんちをする、寝る、泣く)はきちんと出来ているから、心配いらないと説明を受けた。

医師からは38度の発熱と保育器に入っている息子よりも呼吸が浅い状態なので、息子よりむしろ妻の方が心配だと言われた。
ところが、妻自身は術後の状態は問題ないという自覚があるようで、術後のプラン通りにリハビリを始めた。

リハビリは、まずは立つことからはじまって、それから歩く練習。
まずは1歩、2歩、時間を空けて部屋の窓まで、次はトイレまで……少しづつ距離を伸ばしていった。
結果、その日のうちに保育器の部屋まで辿り着き息子を抱っこした。

妻も出産した瞬間だけしか息子に会えていない。
痛みとか呼吸とか発熱とかよりも、多少は無理してでも息子に早く会いたかったのだろう。
そもそも、どう考えても絶好調なわけがない。

出生届を申請するために役所へ行った。

私は字が汚い。
恥ずかしいくらい汚い。

提出するのは息子の出生届、字が汚すぎた結果「読めません」と返却されるならまだいい。
もしも受付の人が読み間違えて名付けた名前とは全然違う名前で受理されてしまったら大変なことになる。

そういう不安を妻がわかってくれているので、出産前に提出する書類を用意しておいてくれた。
おかげで私は書類を担当者に渡すだけで、汚い字を披露しなくていい。

そのはずだった。

書類を提出し、担当者と確認していると、まさかの不備を発見。
書類を1枚追加することになってしまう。

汚い字を披露することになるとは……目の前の書類とぜんぜん違う字に担当者も驚くかもしれない。

でも、私は親になった。
恥をかくことで少しでも親として成長できるかもしれない。

そう思って覚悟を決めたいけど、目の前の担当者がめちゃくちゃお綺麗な方で……
私の汚たない字をLIVEで書くのか……なんて苦行なんだろう。
せめて担当者が役所感溢れるおじさんだったなら、もう少し気楽に書けたのに……

追加の書類を書き始めると「申請」という漢字がわからなくなった。
私の学の無さもあるが、緊張していたんだと思う。
妻にメールを打つふりをして、そっと「申請」という漢字を調べて書いた。

汚い字ではあるけど順調に書き進めていたが、緊張で少し手が疲れたのでペンを止めた。
すると
「出るに生まれるですね。」
やけに冷静な声が聞こえた。



デルニウマレル?
出生?
しゅっせい……

確かに、次に書こうとしている文字は「出生」
ということは、私が出生の漢字がわからないと思って教えてくれたということか?

ペンが止まったのは漢字がわからなかったのではなくて、手が疲れただけなんだけど……さすがに出生はわかるよ。

もしかしてこっそり漢字を調べてたのもバレてたのか?
なんだこの恥ずかしさは……

お綺麗な方の前で汚い字を書くだけでも、十分な辱めはうけただろう?
漢字を調べたことくらいは見逃してくれてもいいのでは?と神様と交渉したかった。

ただ「出るに生まれるですね」の呆れたような、突き放したような冷めた言い方は何だかジワジワくる。
恥ずかしさを通り過ぎて、すこし心地よくなってくる。
けど
「父親だぞ!息子の出生届くらい真面目にやれ!」
自分に言い聞かせた。

出生届は無事に受理されて家族の欄に息子の名前が加わった。

再び息子

夜の診察で肺に残った二酸化炭素が多いと診断された。

保育器はもう1日伸びるようだ。

医師からは「産まれてすぐに保育器に入っている状況は妻も私も不安だろうけど、長い人生だし、生まれたばかりで、急ぐ必要なんてないのだから、保育器から急いで出すよりもゆっくりのんびりさせているので心配いらない」と言われた。


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