芝生の公園で遊ばせた。
相変わらず芝生に手がつくのは怖いようで、何があっても絶対に手だけはつけようとはしない。
芝生に手をつけられないからと言って、何も問題はないことはわかっているけど、私の想いというのか、自然派の子育てを気取ってみたくなったのか、息子に芝生の感触を手でも感じて欲しかった。
ただ、息子自身も少しずつ芝生に慣れてきていて、お座りしながら手をつこうとしたり離したり、芝生に触ってみたいけど触れないという状態までにはなっていて、あと一歩が踏み出せないのか、甘えた声を出しながら私と妻をじーっと見てくる。
その姿が可愛くて、すぐに抱っこしてあげたくなるけど、今回は心を鬼にして少し距離をとって見守ることにした。
距離をとると言っても、2メートルも離れていない息子のすぐ側にいる。
それでも、親バカな私と妻にとっては大変なことで、すぐに駆け寄ってあげたいところを、お互いに「もう少し耐えよう」「もう少し……もう少し」と励まし合っていた。
すごく長い時間見守っていた気がするけど、本当は4〜5分程度だったのだろう。
突然、思い立ったように芝生に手をついて、そのままハイハイを始めた。
息子の中で何かきっかけがあったのだろうか、私がどんなに芝生に慣れてもらおうとしても拒絶していたのに、自分で触ろうと決めた瞬間から嫌がっていたのが嘘みたいにニコニコ笑いながら芝生の上をハイハイしている。
何事も息子には息子のタイミングがあるのかもしれない。
親は黙って見守っていることが……妻と私のところまで辿り着いたから黙って見守りは終了して、我慢していた抱っこをしながら大喜びした。
たかだか芝生に手をつけるようになったというだけのこと。
小さな小さな成長だ。
それだけのことなんだけど、私にとっては息子の成長以外にも重要なことがある。
今までのように、息子の体力を使い切るために”つかまり歩き”で息子を支えながら一緒に動き回る必要がなくなるので、長い間悩まされた腰の痛みとは「さようなら」できる。
芝生の上をハイハイで動き回るのは、息子だけでなく私も楽しい。
そして楽。