第3回一升餅はおじいちゃん(私の父)
息子とおじいちゃんが会うのは、生後2ヶ月の時に初対面して以来、これで2回目。
前回会った時は息子がまだ首も座っていない時期だったから、誰が抱っこしても大人しくしていた。
しかし、今では人見知りも場所見知りも激しくなっているので、おじいちゃんに対しても容赦無く人見知りを発揮して、全力で拒絶することになるだろう。
そして、私はそうなることを密かに楽しみにしている。
おじいちゃんは私にとっては父親で、家庭を顧みない人だったから、その罰として孫から全力で拒絶されてしまえばいいと思っている。
なので、息子を抱っこさせる瞬間、心の中では息子に「やってしまえ!」と思っていた。
ところが、まさかの出来事が起きる。
おじいちゃんとは久しぶりの対面、というより前回会った時は生後2ヶ月だったから、おじいちゃんのことなど息子の記憶には残っていないはず。
それに加えて、おじいちゃんの家を訪れるのは初めてということもあり、息子の人見知りと場所見知りを思う存分発揮できる条件は揃っていた。
それなのに、人見知りも場所見知りも全くしない。
初めての場所だというのに自由に動き回って遊んでいる。
さらに、おじちゃんと目が合っても泣かないし、近くに寄っても、触っても、何をしても泣かない。
むしろ、すこぶる機嫌が良い。
一升餅も3回目にして、今までで一番穏やかに持ち上げて、おじいちゃんから貰ったお祝いをブンブン振り回していた。
結局、私が望むような事態にはならずに、おじいちゃんは人見知りの洗礼を受けることなく、苦労せずに孫の可愛さを堪能していた。
そして、帰り際も息子とおじいちゃんはじーっと見つめ合っていたけど……
何なんだ。
おじいちゃんだけが大丈夫な理由が見つからない。
この二人の間には何があるのだろう。